だれだよ!USCPA簡単って言ったやつは!

公認会計士がUSCPA取得を目指します

のれんは償却の流れ?どさくさにまぎれて過年度遡及を悪用する会社増えそう。

日経の記事を見てびっくりしました。

 

www.nikkei.com

なんでも、IFRSでのれんの償却を検討しており、2021年にも結論を出す予定とのこと。

 

のれんは償却しないのが世界の流れで、償却する日本はガラパゴス的なイメージがありましたが、まさか日本基準の方に合わせてくるとは。

私はのれんは償却すべき派で、最近の安易にIFRS化して、のれん償却回避する魂胆が見え見えの企業に違和感を感じていました。

どう考えても大半ののれんの価値は下がっていくと思いますので、この検討には大賛成です。

 

しかしどうでしょう、記事の通り買収を繰り返している企業にはかなりの痛手。例えば最近だとソフトバンクが3.3兆円もの大金を出して英国企業のアームを買収していましたが、これを償却するとなるとかなりインパクトがあるでしょう。

(2018年度1Qでのれん4.2兆!純資産6.8兆。利益は年間ベースで1兆円ぐらい。のれん償却したら利益も純資産もかなりのダメージですね。)

日本基準の場合、のれん償却は最大20年とされていますが、実務では最長10年というところでしょう(20年も先のことなんかわかりません。そもそも買収した企業が生き残っている可能性の方が低いでしょう。20年前はドットコムバブルのころです。その後も、リーマンショックあり、超絶円高ありで多くの新興企業は死んでるはずです)。

私が監査法人サイドなら、半導体は景気に左右されやすいし、安易には5年以上の償却は認められないケースだと思います。

 

ただここでふと疑問が。過年度遡及を使えば、のれんをPLに計上することなくBSから葬ることができるのでは??アームの例で言うと、基準が適用されても2021年以降になるので、2016年に買収してから5年以上経過することになります。こういう基準変更は過年度遡求するのが普通なので、過去のPLに遡って会計処理を行います。しかし、開示すべき財務諸表は直近2期分。なので2期以前に償却が終わっていればPL上は何も現れず、期首剰余金を直接減らす処理を行うことになります。つまり、例えば以下のような仕訳です。

利益剰余金(BS) 100/ のれん(BS) 100

 

仮に年度償却していれば

のれん償却(PL)  20/ のれん(BS)  20

が5年間PLにヒットするわけですがこれを回避するチャンス!

監査法人にも償却5年ぐらいと言っておけば、けっこうあっさり通るでしょう。

短ければ短いほど、この際都合がいい。

 

そしてBS上ののれんがゼロになるので今後の減損リスクゼロとなります。

 

ソフトバンクのように極端にのれんが大きい会社には自己資本激減につながりつらいでしょうが、減損リスクに怯える企業にとっては、どさくさにまぎれてBSから消す絶好の機会になり得ますね。