だれだよ!USCPA簡単って言ったやつは!

公認会計士がUSCPA取得を目指します

日経の「4大監査法人がタッグ」の記事を読んで。残高確認の実務について。

5月12日の日経朝刊に下記のような記事が載っていました。

 

www.nikkei.com

残高確認業務のシステム共通化で、雑務を減らすという趣旨のようです。

こういった改善活動については大いに賛同します。

実際のところ、最初は手間がかかるのでしょうが2~3年程度運用すればいい方向にすすむでしょう。

記事によると下記のような仕組みを目指すようです。

現状、決算書を作成する際、企業間で発生する売掛金などの債権や買掛金などの債務の残高は、顧客である監査先企業の取引先に確認状を郵送するなどして確認している。膨大な量の確認作業は担当者の負担が大きい。新システムでは企業が金額をオンライン入力する方法を検討。監査する側、される側ともに決算に関わる負担を軽くする。

 これだけみると、監査実務が分からない人にはいまいち効果が分かりにくいかもしれません。郵送から電子に変えるだけでそんなに意味ある?と。

 

確認手続とは

まず確認手続は監査上、非常に重要な手続きです。これが完璧に終われば実質的には監査は終わったといってもいいというレベルというと言いすぎですが、それに近い感じだと思います。

確認手続とは、監査法人から直接、債権者・債務者等に被監査会社の債権・債務残高を問い合わせて、被監査会社が計上している金額の妥当性を検証する手続きです。

ここで、「直接」問い合わせることが重要となります。

例えば会社に代わりに確認状を発送してもらう場合、発送したふりをして、自社で嘘の回答を書き込んで監査法人に返送する可能性もあります。社印等も偽造されると発見は困難です。回収もそうですね。回収した後に、改ざんする可能性もあります。なので、発送・回収は直接行う必要があります。

 

現状の実務(売掛金を例とします)

売掛金残高相手先別一覧より、発送先を抽出します。統計に基づいた手法を取ります。

②会社に残高確認状を作成してもらいます。

監査法人側で確認状に記載されている発送先・金額等を確認します。

監査法人側で発送用封筒、返信用封筒を準備し、郵送用封筒に確認状本紙、返信用封筒等を入れて、発送します。海外の場合はEMSや国際返信用切手を用意したりします。

監査法人側でコントロールシートと呼ばれる残高確認状のコントロールを行うシートを作成・更新していきます。発送先、金額、発送日、回収期日、実際回収日等を記載していきます。

監査法人に返送されてくる確認状を回収・開封し、回収日の押印を行います。

⑦確認状をチェックしていきます。押印漏れ等があると確認状の信頼性が確保できないとみなされる場合があり、再発送を行います。

⑧回収期日を過ぎたものについて、会社に督促を依頼します。

⑨回収できないものは、代替手続を行います。

 ⑩随時、回収したもので、金額に差異が生じているものは原因を追究していきます。

どこが改善するのか

今回の記事を読む限り、④⑤⑥⑦が改善するのでしょう。

大したことのないような印象を持つかもしれませんが、売掛金の残高確認状は業種によってはすさまじい量の残高確認状を送ります。

メーカー等で売り先が商社等に限られている、小売り等でクレジットカード会社に主な債権がある等言うようなケースでは、発送先は多くありませんので、そこまで苦労はありません。

ただ、商社のような売り先が膨大で、とびぬけて大きい売上先がないような場合、発送件数は1,000件を超えることもあります。会社の確認状作成負担、監査法人の発送負担(1,000件を封筒に詰め続けると時には、返信用封筒の入れ忘れ、コントロールシートへの消込漏れ等、いろいろ問題が出がちです。)、回収件数も膨大なので開封だけでも大変、コントロールシートへの入力(コントロールシートベースで督促等も行いますので、更新漏れやつけ間違いがあると誤った督促を行うことになってしまいます。)等、すさまじい単純労働力が必要です。もちろん、事務局やアシスタントが中心にやる事務所が多いでしょうが、決算期は3月に多いですので事務局も人手不足になり、タイムリーにすべてやろうと思うと会計士も実際はかなり手を動かすことになります。

この点、システム化して発送、回収がなくなるだけでもかなりの負担減で、コントロールシートへの自動入力機能等がつけば、ヒューマンエラーは激減するでしょう。

また、海外の会社に送る場合、郵送のタイムラグや、先方の文化的な問題なのか紛失が多く、回答がおそくなりがちですが、システムでできれば郵送のタイムラグや、確認状が届かなかったといったことは起きません。

 さらに、システム上で回答できるなら、ハンコの漏れによる再発送といった無駄はなくなります。

 

気になる点

どういうシステムを構築するのかは気になります。現在でも外資系金融機関で電子的確認状を使っている会社はありますが、実務的には正直、結構手間です。紙での回収の方が楽だと思います。先方にメールアドレスを通知し、むこうの送ってくるパスワードを指定のURLに打ち込む等の作業が必要になっています。

電子にしようと思うと、どうしても発送の際にはEメールを使うことになると思いますが、アドレスをいちいち入力するのはかなり手間ですし、もしアクセスパスワードを送るのであれば、万が一間違えたアドレスに送ると、おかしなことになったりする懸念もあります。担当者間違い等でもややこしいことになりかねません。郵送であれば「経理御中」で済みますが、経理部門のアドレスってそうそうないですよね。

このあたり、監査法人の精鋭たちに知恵を振り絞ってやりやすい方法を考えてほしいですね。 

 

結論

いずれにせよ、こういった改善は非常に大事です。会計士らしい仕事ができるような環境づくりが、品質確保の第一歩です。

 

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